第1章 幕開け

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『とにかく姉貴も来れるならすぐ来て』 「う、うん、分かった。今から向かう」 そう言い電話を切って、一度出た職場に引き返し戻った。 『あれ?本条さん、忘れ物?』 係長の一ノ瀬さんが居たので事情を話し、休みをもらった。 『分かったわ。落ち着いたらでいいから連絡してちょうだいね』 職場を出ると、自然と涙が溢れた。 お父さんが死んだ? だって、前に実家に帰った時はあんなに元気に笑っていたよ? もしかしたら、私が帰宅して「お父さん!?大丈夫?」て問いかけたら『もう大丈夫だよ』って笑って出迎えてくれないかなぁ。 お父さんが死んだなんて信じたくないよ。 汽車の中では、涙を止めようと思っても次から次へと流れるため窓枠に頬杖を付き外を見てるフリをした。 着くまでの間、ずっと携帯電話を握りしめていた。 駅に着くと急いで走った。 涙で顔がぐしゃぐしゃになっても構わず、がむしゃらに走って病院を目指した。 とにかく…1分でも1秒でも早く病院に着かなければ…その事で頭がいっぱいだった。
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