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武本side
『久しぶり。元気?』
俺は久しぶりに会う妻・映理(えり)と刑務所で話をしている。
もちろんガラス越しに。
「まぁまぁかな」
『会えて良かったわ』
映理はいつもと変わらず笑顔を見せてくれているけれど、俺は少しも笑えない。
「映理…あのさ」
ずっと考えていた事。
言わなければいけない。
映理の目をじっと見た。
『何?』
「俺と離婚してほしい」
『それはイヤよ』
即答だった。
映理も俺の顔をじっと見つめている。
「映理のためだ。俺と一緒に居たら映理は」
『大丈夫。私は、直哉が好きなの。どんな事でも耐えるわ』
映理は俺の言葉を遮り、涙声で話している。
『私…直哉と離れたくない。ちゃんと待ってるから』
「……」
何も言えない。
これから先、映理は俺のせいで肩身の狭い思いをするだろう。
『周りから何を言われようと気持ちは変わらない。……また来るわね』
手を振って帰っていく映理を、ただずっと見ていた。
後から『やっぱり離婚すれば良かった』と言われるのは嫌なんだけどな。
本条誠一さんを殺してしまい、俺のせいで悲しんでいる人がいる。
本条さんも今、俺のせいで泣いているかもしれない。
刑期が終わったら会いに行こう…。
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