第2章 別離話

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「はぁ…」 店に着き、入口の前で深呼吸をする。 向かっている途中、雄一から『今着いた』と連絡が来たから、中に入ればもう雄一は居るのだろう。 このお店は昼はカフェで夜はバーになっている所で、私はもちろんお酒を飲むつもりはなかったのだけれど、雄一が『ここが良い』と言ったので、そうした。 今日で会うのはきっと最後だから、最後は雄一の言う事を聞こうと思った。 『いらっしゃいませー』 ドアを開けるとカウンター席に雄一は居た。 前にワインを置いてあるので、少し飲んでいたんだと思う。 もし、酔っていたら、まともな話がしずらい。 『あ、依智花。久しぶり』 雄一の横に駆け寄ると、いつもの笑顔があった。 良かった。酔っていない。 私は横の席に座り、オレンジジュースを頼んだ。 『え、お酒飲まないのか?』 「明日仕事だし。それよりごめんね…待ったでしょう?」 『いや、そんなに…。それで、お母さんの様子は?』 「うん…だいぶ良くなった。まだ、おかゆしか食べられないんだけど…」 …だめだ。 何て言ったら言いか分からない。 何を言ったって結末は同じだし、雄一を傷つけてしまうことには変わりはない。
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