第4章 心理戦

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目の前の母は泣いている。 母の考えも分かるけれど。 でも、愛してもいない雄一との子どもをどうやって育てればいいの…。 私は無言でトイレに入った。 …。 …。 …。 陽性だった。 つまり、妊娠していた。 私はすぐに産婦人科へ行った。 『妊娠してますねー』 「そうですか」 わりと家の近くにある産婦人科に行くと、40代くらいの女の先生が明るい声で言ったけれど、私はきっと無表情。 『えっと…本条さん?』 「何でしょうか」 きっと、私の態度が怖いのだろう。 先生は苦笑いをしている。 『産みますか?』 「産みません。中絶希望なので」 『分かりました。では、手続きの説明をしますね』 確かに、私が決めた事はいけないのかもしれない。 本当に子どもが欲しい女性にとって私は「敵」になるだろう…。 けれど、望まない妊娠をしてしまった。 産んでも育てられないから。 仕方ないよ…。 病院を出ると、涙が溢れた。 本当は、授かった命。 出来る事なら私の子どもに会いたかった。 ううん、これで良いんだ。 私は武本くんの子どもを産めばいいのだから。 絶対…可愛い。 男の子でも女の子でもいい。 早く会いたいよ。 武本くん。
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