第4章 心理戦

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-------------------- 中絶手術は無事に終わった。 これからが勝負だ。 武本くんを手に入れるためなら、どんな手段を使ってもかまわない。 「うん、大丈夫だよ」 夜、私の事を心配した梨代那が電話を掛けてくれたのだ。 「それよりも、一週間後ね、結婚式。本当におめでとう」 『ありがとう。じゃあ、お大事にね』 そう梨代那は言い、電話は切れた。 「スピーチ、考えないとな」 そう一人言を言い、眠りについた。 そして、一週間後。 梨代那の結婚式…。 スピーチは無事終わり、パーティーが始まった。 梨代那は、結婚式→パーティーという順で計画していた。 『依智花!』 「あ、梨代那」 テーブルの近くでグラスに入ったジュースを飲んでいると、パーティードレスを着た梨代那が私の所に来てくれた。 『来てくれてありがとう。スピーチもありがとうね』 「いいえ~、梨代那、綺麗だね~」 それは心から思った事だった。 私がそう言うと、梨代那は花束を出した。 『はい。これ』 「ん?何?」 『いやだなぁ~、これはブーケだよっ!!』 「え…」 もちろん知ってる。 花嫁さんからブーケを受け取ると次に幸せになれるって…。 でも… 「えと、これは花嫁さんが投げて私達がキャッチするものでは」 『あー、それをするとさ、どこに行くか分からないし、結婚してる人がもらっちゃうかもしれないでしょ?』 「うん、まぁ」 梨代那は涙目になって、もう少しで涙が流れそうだった。 「梨代那」 『私は、依智花にも幸せになってほしいのよ。依智花は辛い思いを沢山してきた。私は何もしてあげられないし、気持ちも分かってあげられないけど、依智花の事大切に思っているから…。これ受け取って?』 私は両手でブーケを受け取り、「ありがとう」と言った。
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