第4章 心理戦

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「乗って?」 車は念のためレンタカーを借りた。 バレたら困るし。 武本くんは、一度頷くと無言で助手席に座った。 『どこに行くの?』 「海が見える場所」 私は、そう言ってエンジンをかけた。 武本くんが隣りに乗っている。 前じゃ信じられない事だけれど、私が武本くんの隣りに居る事は事実だ。 緊張して話せないけれど、このままで居よう。 ラジオを聴きながら… 景色を見ながら… 武本くんにはリラックスしてほしいから。 「ちょっと待ってて」 途中、近くのスーパーに寄って、パンとお茶を買った。 『ありがとう』 「お腹、空くからね」 「着いたよー」 私は勢いよくドアを開け、外に出た。 平日だから人も居ないし、空気が良い。 「キレイだねー」 武本くんが降りるのを待って、私は武本くんの右手を握りしめた。 「行こう?」 武本くんは頷き、一緒に歩く。 太陽の光が海に反射して、とてもキレイだった。 海の近くまで下に降りて行った。 『…あのさ』 武本くんが話しだしたので、私は、ゆっくりと武本くんを見た。 『本当にありがとう。なんか、海見たら落ち着いた』 「それは良かった」 『本条さん』 「何?」 『この前言ってた事だけど…俺も…これからも本条さんに会いたい』 一瞬、心臓が止まったかと思った。 そう言ってくれるのをずっと待ってた。 「…うん。ありがとう。これからも会おうね」
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