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「でも…やってみて良かった…個人的に、詐称の代償は払ったと思います」
「まあ、ダメなんですけどね…」
やってはいけないことをやった共犯者同士、安易に書き換えた歴史に合わせて今を修復させられる罰は受けたと思う。
【もし、みどりが学生時代に作家を目指し、賞を取っていたら】というパラレルワールドを、強制的に自分たちの世界に繋げたような不思議な実感があった。
それから一か月かけて、二人は作品を完成させた。
「二ノ宮様、見事に才能を開花させましたね、おめでとうございます」
ニコニコしている花咲の、丸メガネの奥の目が、微かに笑っているように見える。
ずっと、みどりの努力と成長を見てきた山崎も、心から祝福したい気持ちだった。
「山崎様は、これからどうされるおつもりで?」
「今回、二ノ宮みどりという作家を作り上げていく中で、自分の殻を破れたような気がします…受賞歴を失って経歴は振り出しに戻りましたが、情熱も振り出しに戻りました」
「ほう…」
今度は、はっきり花咲の目が笑っていた。
「もう一度、挑戦してみます」
このパラレルワールドを、自分が作家になれた未来に必ず繋げてみせる、と思う、しかし…。
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