花は未来にひらくのか

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 それを売り渡すことができるなら、すっぱり決別して新たなスタートの資金にした方がいい。  「わかりました、了承すれば、それでいいんですよね?」  「ありがとうございます!」  「開花生活コーディネーター…花咲、実…」  その女は、人目を忍ぶようにサングラスとマスクで顔を隠して、花咲のオフィスを訪れた。  応接のソファーに座り、渡された名刺を見る。  怪しげな肩書だが、そもそも女の方からネットで花咲のことを発見してコンタクトを取ってきたのだから、それがどんな仕事なのかは承知している。  今日は、メールで依頼していたものが手に入ったとの連絡を受けて、契約にやってきたのだ。  「二ノ宮みどり様、あなたは過去に山路ひろみというペンネームで作家活動をし、小説が大賞を取ったことがあることになりました」  二ノ宮みどりと呼ばれた女はテーブルの上に身を乗り出して書類を見た。  そこにはみどりが聞いたことも無いような小説のコンテスト名と、大賞受賞者のプロフィールが書かれていた。  「山路ひろみ…19歳…」  「受賞当時の年齢設定です」  「性別、女…氏名、二ノ宮みどり…」
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