花は未来にひらくのか

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 みどりは、ミスコンの日本代表を決める大会で、惜しくも準優勝になり世界行きを逃していた。  買い取った経歴によって、知性を備えた美という付加価値を得て善戦したが、あと一歩及ばなかった。  それだけなら、こうして会いに来ることは無かった。  狙っていたミスコンでは勝てなかったが、準ミスの美貌の作家としてブレイクしてしまったのだ。  山路ひろみ名義で賞を取った作品が見直され、二ノ宮みどりの名前で出版されることになった。  「別に、名前ごと売り払った過去ですから、今更分け前をよこせとか言うつもりはありませんよ」  「あら、そうですの…それはともかく、お呼びしたのは過去の作品の事ではありませんの」  事前に事情を聞いてるであろう花咲は、笑わない目でニコニコしながら二人を見ている。  「困っているのは、次回作…モデル業界の裏側を描く小説の執筆を依頼されまして…」  「執筆依頼…」  「本当は書けませんなんて言えませんから…受けてしまいました…」  大賞受賞という形で一度は花ひらいた山崎の才能は、その後も連鎖して満開になるまでは至らなかった。
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