花は未来にひらくのか

1/13
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 才能が開花する、努力が実って花ひらく、人生においてどのような成功を手にするかは人それぞれだ。  だが、明確に他者に抜きん出て花ひらく成果を得られる者は少ない。  だからこそ、花ひらく未来を目指して人は努力を惜しまない。  そう、それは普通、未来を切り開くことなのだ。  あくまでも未来の可能性を手に入れることなのだ。  しかし、そんな才能や努力が花ひらいた「過去」を手に入れることができたら。  「あなたの過去に、花を咲かせてみませんか」と誘われたら。  努力せずして、花ひらいた後の人生を手にしたら…。  「開花生活コーディネーター…花咲、実さん…ですか…」  名刺を見ながら、喫茶店で対面に座る男へ不審そうな視線を送る。  ニコニコとやたら愛想がいいが、丸メガネの奥の目は笑っていない。  「ええ、山崎様が才能を開花させたその過去を、お売りいただきたいのです」  山崎が、この花咲と名乗る男から連絡を受けたのは三日前のことだった。  夢に破れて、バイトをしながらその日暮らしの生活をしていた山崎に、持っているものを高値で買い取りたいという話を持ち掛けてきたのだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!