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まったく、何を考えているのかさっぱりわからん女だぜ ―、
とりあえず宣彦は小さく愚痴を吐いてみたがすでにその声色に緊張感はなかった。むしろ安堵すら生まれていたといってもいい。つい先ほどまで明らかに敵対していた女が、今は眼前で無防備に寝入ってしまっている。
わずかに肌蹴た足もとから覗く淡いレースの下着、それが女として自分を誘っているようにも、それ自体が痛い罠のようにも思えた。
どちらにしろこの状況下でも素で眠ってしまうその豪放さはガサツと呼ぶにはあまりにも壮快で見惚れるものがあったのだ。
しかし、あの遼一をして「凶悪」と言わしめた女には違いなく、用心するに越したことはない。
宣彦はベッドから毛布を運びシェファにそっとかけ、自身は部屋の反対端の壁に背をついてゆっくりと目を瞑った。
(この女がここにいるということは、案外俺たちは安全な立場にいるのかもしれないな)
そして、ふと思った。
遼一の周りには不思議と胎の据わった人間が集まっている。美月然り、茜然り、そしてこの女や王たちにしても然りだ。
何とはなかったのに猿田や金城に慕われている自分と、どこか似た部分があるのかも知れない。
(もっと違う形で逢えたのなら、案外ヤツとも仲良くやれたのかしれないな)
自然とそういった考えに辿りついた。
ふっ -、
ガラにもなく口角があがり笑み綻ぶ。
まぁいい、それにしても、他の者たちは無事だろうか -、
ようやく宣彦の心配は猿田たちに向けられた。
自分の部屋にシェファがいるのなら他の3人の部屋にも何かしらの訪問者があるのかもしれない。
その予感こそまさに的中で、同じころ別室の猿田は酷く狼狽していたのである。
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