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― 6階通路 ―
一通りの手はずが済むと王はまた6階にあがった。
ここで一旦茜を5階の寛治たちの部屋に戻そうと考えたからだ。
悦子や宣彦たちの訪問は当初の予定にはなかったが、この王を悩ませるほどのイレギュラーでもない。むしろ気がかりは遼一のほうにある。
(あの美月という娘だけはどうもあなどれない)
王はそれを懸念していた。
まずはふたりを切り離すべきだ -、
しかしその方法が何も浮かばない。へたをすれば遼一自身が使い物にならなくなる可能性がある。
どちらにしても時間がない。とりあえず茜だけでも離しておこうと思った。
扉に架けたふたつの南京錠を外す。
そして部屋を覗き込むと美月はまだ起きていた。
「警戒するのはかまいませんが少しは寝たほうがいいですよ」
紳士然とした態度を崩さず王は忠告した。
それでも美月は返事なくただ睨みつけるだけで、床に膝つき完全に寝入ってしまった茜の肩をも抱いて威嚇をやめない。
(どうにもこの娘だけは馴染めそうにない)
そこで王は舌打ちすると何もせずに部屋を後にした。
明日、遼一に美月のことを直接訴えたほうが間違いない、そう考えたからだ。
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