彼女が咲かないことを祈る

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 「花粉症ってさ」  「かかると身体から花が生えたりする?」  友人のタカハシからのメールだった。  「今年初めて花粉症になったからわからんねんけど」  「花粉の吸い込みすぎで、花が身体から生えたりする?」 メールを何度か読んで意味を読み取ろうとしたけど、 無理だった。  「頭から花でも生えてきたの?」  「ううん。頭じゃなくて右肩。」  「何の花?」  「わからん。白い花。」 ケータイで時刻を見ると夜の八時過ぎ。 酔っ払っててもおかしくない時間帯だが、 タカハシはお酒が飲めないはずだった。  「誰かと飲んでるの?」  「家でひとり。」  「一人で飲んでるの?」  「コーヒーは飲んでる。」 ただの暇つぶしのメールだろうか。  「花粉症の薬は飲んでるの?」  「病院でもらったのは飲んでる。あと鼻から吸うやつ。」  「スプレーのやつね。」  「鼻から吸い込む薬。」  「その言い方やめろ。」 いつもの冗談だろうか?タカハシはよくわからん冗談を急に言ってくるひとだからなぁ。  「オレは花粉症で花が咲いたことはないなぁ。」  「えー、じゃあ花粉症じゃないのこれ。」  「くしゃみとか目が痒いとかはある?」  「目は大丈夫。くしゃみも薬飲んだら大丈夫になった。」  「タカハシ、熱とかあったりする?体の具合は悪くない?」 ふと高熱で幻覚でも見てるんじゃないかと心配になってきた。 一人暮らしでそんなことになってたら大変だ。  「熱は大丈夫。」  「そうか。」 一度心配するとどんどん悪い考えが浮かんでくる。 タカハシは弱いとこを見せたがらないから、 余計に心配になってきた。  「明日休みだから、遊びに行っていい?」  「いいけど、なんで?」  「そろそろ前に借りた本を返す。あとついでに肩の花も見たい。」  「べつにいいけど。何時ごろ?」  「お昼過ぎくらいに行く。駅に着いたらメールするよ。」  「はーい。」  まあ多分大丈夫だとは思うけど、明日は休みだし暇だしタカハシの部屋に 遊びに行くことにした。
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