彼女が咲かないことを祈る

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 「ごめん、大丈夫?痛くなかった?」  「うん、全然大丈夫、大丈夫。」 そう言うタカハシは、どこか焦ってるようにも見えた。  取った花を触ってみる。べたべたしたり、ねばねばしている部分はない。 元々あった花を接着剤か何かでくっつけてたってわけでもないみたいだ。  「あ。」 タカハシの声で花から視線を戻す。 タカハシの右肩に、緑色の血管のようなものが浮き出てきて、 脈打つように少し動くと、 緑の血管の一部が腫れ上がり、 細長く伸びるように膨れていくと、 白いジャスミンの花になって咲いた。  「花が咲いた……」  「うん、咲いた……」 目の前で起こった不思議なことに、 バカみたいな感想しか出てこなかった。  「前のやつも、こんな風に咲いたの?」  「ううん、前のは知らん間に蕾が生えてたから。」    「これ、どうしたらいいかなぁ。」  「困ったねぇ。」 他人事のように言ってしまった。 正直、皮膚科やなんかに連れて行っていいものかどうかもよくわからない。 かといって、目の前で起こったことが普通じゃないってことは いくらなんでも僕でもわかる。  「ごめん、ちょっと写真に撮っていい?」  「え?」  「知り合いに、ちょっと相談してみたい。ひょっとしたら何かわかるかもしれない。」  自信はなかったけど、他に思いつかなかったので、タカハシの許可を得て、 肩のジャスミンの花を撮ると、すぐにメールで送った。
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