彼女が咲かないことを祈る

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 教授は引き出しから小さな葉っぱの入った瓶を取り出した。  「水かお湯、お茶でもいいが、これを1、2枚入れて飲みなさい。 朝晩に飲めばすぐに効くはずだ。」  「それって。」  「なんですか?」  「ミントの葉だよ。もちろんちゃんと洗って乾かしてある。口に入れても 問題のないものだよ。ああ、でも別にこれそのものを飲まなくてもいい。 これを浸した水なりお茶なりを飲めばそれで充分。冷たい水やお茶なら30分、お湯ならその半分くらい付けて成分が出てから飲んでください。」  「そんなもんで効くんですか?」  「ミントってのは異常な繁殖力を持つ雑草でね。彼女の身体に寄生したジャスミンも、ミントの成分を飲んだ身体では、根付いて花を咲かせることもできなくなるはずだよ。」  「じゃあチョコミントとかも食べたりした方がいいんですか?」  「うーん、これはちょっと特別製のミントでね。多分普通のミントじゃ効果が出ない。もちろん美味しいから食べること自体は問題ないけどね。」  「わかりました。ありがとうございます。」  「もしも問題が解決しないようならまたいらっしゃい。暇なサトウくんを使えばいいから。」  「勝手に許可を出さないでください。もちろんタカハシが来るときは一緒に来るけど。」  「わかりました。ありがとうございます。」 タカハシはお礼を述べ、僕も一緒に教授の研究室をあとにした。  研究室から出てすぐ、僕はどうしても気になることがあり、 タカハシを先に行かせて、研究室に踵を返した。
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