彼女が咲かないことを祈る

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 「おや、お早い再来で。何か問題あったかい?」  「さっきのミントのことですよ。」  「ああ、前にもらったやつだよ。言っただろう?使い道が色々あるって。」  「アレをタカハシに飲ませるって、それ以外に方法はなかったんですか?」  「アレが一番手っ取り早くて確実だよ。」  「いや、でも。」  「なに、人に生えてたミントもプランターで育てたミントも洗えば大差ないさ。毒素が出るわけでもない。」  「気分の問題ですよ。」  「おおそうだ、彼女の相談料だ。ちょいと追加で貰えないかい?」    ハァ。 無意味だろうけど、教授への当てつけに溜息をついてから、 僕は右手を差し出した。  涼風が吹き抜けるような感触のあと、 僕の右腕に巻き付くようにミントが生い茂った。  「いやー、ありがとうありがとう。しかしなんでサトウくんも ミントが生えてるって教えてあげなかったんだい?その方が彼女も安心したかもしれないのに。」  「あんまり人に見せたいもんじゃないですよ。それに見せたところでタカハシの治し方はわからないし、余計に混乱させるだけです。どっちにしろ教授のところに連れてくることになったんですから。」  「サトウくんの身体のそいつを治せていない私を評価してくれてありがとう。まあ前にも言ったが、キミのそれは実在のミントと同じく、土ごと掘り返しても根絶やしにするのが難しい生命力なんだよ。」  「わかってます。それに自分で制御できてますから、今のところは問題ないです。」  「それはよかった。ああ、それより早く戻ってあげなさい。あのくらいの年頃の子は、教授とはいえ女のところに長居しているといい気分がしないだろう。」  「あーはいはい。」  「ジャスミンの花言葉は愛想のよい、柔和、いい娘さんじゃないか。仲良くおやり。」  親戚のおばちゃんみたいだな。  どーもこの手の大人の余計な気遣いは好きになれない。右手のミントを引っ込めると、急いでタカハシのところに戻った。
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