くまのほらあな～その2～

山歩きの話～その2.御岳山から日の出山縦走コース～

「お腹空いた！」
「何か食べよう」

　横長の、木でできたベンチがいくつか並んでいる。

「とりあえず座ろうか」
　並んで座り、各々食料や飲み物を出す。

「今日はね、カレーメシ持ってきたよ！」
「わお」

　高尾山の時に持ってきた、山用のタンブラーと、カレーメシ。
　お湯を入れて、5分。

「？」
　何かがウロウロ飛んでいる。

「ハチだ！」
　ミツバチみたいな可愛いものではない。スズメバチのようなクマバチのような、大きいやつだ。

「逃げよう、逃げよう」
「君はお呼びでない」

　ワーワー言いながら、別の空いているベンチに避難する。そうこうするうちに、5分が経った。

「いただきます！」
　疲れた体に、濃い味と温かさがしみる。

「うんま」
　やや風が強いが、5月だけあって寒くはない。むしろ、気持ちいいくらいだ。

「あとね、お菓子も持ってきたんだ」
　S子が小袋を2つ出した。枝豆スナックと、キャラメルコーン。

「ここ、真ん中に置いておくから。自由に食べて」
「ありがとう」

　カレーメシを食べ終え、お菓子をつまみつつ、心地よい空気に浸る。
　突風が吹いた。

「あっ！」
　キャラメルコーンは間一髪で抑えたが、枝豆が見事に落ちてしまった。

「あー」
　まだ半分しか食べていなかったのに、枝豆は無残に土の上に転がった。これでは砂利がけスナックである。どう考えたって、食べられない。

「やっちまったねえ」
　トボトボと拾う。

　風が吹く中、ベンチにサクサクスナックを置いてたら、そりゃ飛ばされるわけだ。完全に、私たちの考え至らずである。

　スナックの件は残念だが、こういうこともある。
　いや、カレーメシを転倒させなかっただけ、よしとしておこう。

　遊びは、切り替えが大事だ。