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「そろそろ行こうか」
山頂に着いて、およそ1時間。ちょうどいい頃だ。
再び、出発する。
これ以降は、基本下り坂。ひたすらに、下って行くのだ。
しばらく下るうち、私は気付いてしまった。
「……」
来た、違和感。いや、これは――痛い。
左の、ひざが痛い。
ひざはまずいだろう。あれか、お年寄りや中年がひざが痛いというあれか。うちの母がサポーター着けてるあれか。
以前、スピッツのライブのMCで、マサムネさんがこう言っていた。
『軟骨は消耗品ですからね、ひざとか腰とか、あの無理しないようにしてください』
名言。軟骨は消耗品。
まさか、こうして歩いている間にも、私の軟骨は消耗されているということか。
勘弁してくれ、さすがにまだそんな年齢じゃない。
階段を降りる時、右足から降りると左が痛い。どうやら、曲げて踏ん張る時に痛むらしい。
せめてもと、左足を先に下ろして、半歩ずつ降りる。
うん、これなら痛くない。けど、今度は右がやられそうだ。
坂はもう、どうしようもない。痛みに耐えつつ、踏ん張るしかない。
この痛みから解放されようと思ったら、そりで一気に滑り降りるほかない。
あまりにチマチマ降りるから、さすがにS子に申告せざるを得なくなった。
「ごめん……ひざが痛い」
「大丈夫? 歩ける?」
「うん、歩けるは、歩ける」
幅に余裕のある下り坂に差し掛かると、S子が蛇行を始めた。
「こうすると、少し楽だよ。坂に対して横向きで降りるの」
なるほど。
「で、小股でちょっとずつ歩くの。なるべく楽にするのが1番だよ」
確かに、真っ向から下るよりはマシだ。私も先輩にならって、ウロウロ回る。
これができたのも、また人が少なかったからであろう。前から後ろからジャンジャン人が来ていたら、さすがにできない。不幸中の幸いといったところか。
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