山歩きの話~その3.寝不足・水分不足の金時山~

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 帰りは、S子のポールを2人で1本ずつ分け合って降りた。  登りは推進力を増やしてくれるが、下りは足にかかる衝撃を和らげてくれる。  つまり、私のひざを守ってくれるわけだ。  これは大事だ。借りよう。  行きですでに体力も、足も消耗しているのだ。痛くてとうとう動けない、なんて言いだす未来が見えている。  おお、これまた全然違う。いいぞ、いいぞ。このまま丁寧に下りて行こう。  この時がたまたまそうだったのか、実際に割合が多いのか。  金時山の登山客は、年齢層が高かった。  若い人もいるにはいるが、みんなひっそりと登っている。  ワイワイ話し、ヒーヒー言っている組み合わせは、私たちくらいしかない。  だから目立ったのだろうか。  先ほどから、私たちを追い抜き抜かされているおじさんに、声をかけられた。  最初は、元気だねとかなんとか言われ、そのうちに、この花がなんて名前だとか教えてくれるようになった。  しかし、次の名前を聞いたそばから、前の名前が抜けていく。  残念ながら、私たちの脳のキャパシティはそんなに大きくなかったようだ。  妙に慣れているなと思ったら、おじさんはプロのガイドであった。  基本は、丹沢で案内をしている。  今日も本当は予定があったのだが、あちらは天気が悪いということで中止にしたのだ。 「その人たち初めてだったから。悪天候で歩いて、嫌な印象つくのもよくないでしょ。せっかくなら、いい印象持ってもらった方がいいじゃない」  全くその通りだと思った。  私も、何気なくS子と登ってみた高尾山が楽しかったから、今ここにいるのだ。  散々な結果で、苦しい思いだけしてたら、続いていないと思う。
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