山歩きの話~その3.寝不足・水分不足の金時山~

9/10
前へ
/126ページ
次へ
 ロマンスカーは18時34分の小田原発だ。小田原までは、鈍行で移動する。  さすが観光地、電車は人でいっぱいだ。  ところが、小田原で下車する人が意外にも少ない。 「みんな、鈍行で帰るのかな」 「結構、きついよね」 「そんなに高いかな」 「でも家族とかだとさ、×4人とかで地味にいくんじゃない」 「あー、なるほどね」  鈍行で頑張る皆さんには悪いが、私たちは特急料金を払ってでも、座って帰らせてもらう。  ロマンスカーは、やっぱり空いていた。  車両の1番後ろの席に、2人並んでゆったり座る。当たり前だが、バスとは大違いだ。 「さっき買った梅、食べてみようかな」 とS子が言った。  1粒で売っている、いいやつに決まっている梅干し。  袋を開けて、かじった。 「美味しい? やっぱり違う?」  しばらく咀嚼した後、S子がうなずいた。 「うん、美味しい――けど、ご飯がほしい」  でしょうね。  炭水化物なら、圧倒的に米というほど、白いご飯が大好きなS子。  それは、家で食べた方がよかったんじゃ、というセリフを、どうにか飲み込んだ私であった。 「これも食べよう」  次にS子が開けたのは、まぐろチーズ。  まぐろの角煮とチーズが合わさったキューブが、個包装されている。  石原物産のまぐろチーズで調べていただければ、わかるかと思う。 「1個あげるよ」 「いいの? ありがとう」  2人そろって、まぐろチーズを口に放り込んだ。 「ビールほしい!」 「ご飯がほしい!」  どっちがどっちのセリフかは、あえて書くまい。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加