山歩きの話~その3.寝不足・水分不足の金時山~

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 小田原を出発した電車は、新宿に19時45分到着予定だ。  1時間もかからない。  だがしかし、心地よい揺れと広いシートに、鉄壁の私も眠気が差してきた。  何せ、5時前に起きてから1度も寝ていない。  そのまま、山を登って、降りて、ご飯を食べて温泉に入った。  バスタ新宿で待ち合わせた朝が、ずいぶん前のように思える。 「今日の私たち、めっちゃ充実してたよね」 「ね、朝からフル活動だもん」 「本当なら、1泊挟んで2日に分けてもいいくらいの行程よ」 「うんうん」  贅沢を言えば、このまま箱根の宿に泊まるというのもありなのだ。  でも、帰れる距離だし、これはこれでいい。  それに、もし泊まった場合、汗でぐしょぐしょになった衣類たちを一晩放置することになるのか、という懸念もある。  ま、それはどうとでもなるだろう。  それよりも。 「ちょっと……私、寝ていい? 今なら寝られそう」 「どうぞ、どうぞ。よかった、なんか私ばっかり寝てたから」  それはそうだ。  目を閉じたら、ズンと重くなった。ああ、これは寝られる。  少しばかり休む。静かな車内で、2、30分ばかり寝た。  新宿に着く手前で、目が覚めた。いやあ、少し寝ただけでも違う。気分がいい。  この後、家に帰るまでも頑張れそうだ。  そう思って隣を見たら――やっぱりS子は寝ていた。  本当、裏切らないなあ。  翌日の筋肉痛はひどかった。もう、避けては通れないらしい。  今回は特に、太ももも酷使したから、まんべんなく痛い。  これはもう、毎度おなじみになりそうだ。  というわけで、今回はふらつきに耐えた登山となった。  金時山。いつか、もっと強くなってリベンジしたいものだ。  さて、次の山はいったい何に耐えるのやら。
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