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おつまみすき焼き
前回に続き、食べものの話で恐縮である。
しかし、すき焼きを食べたのだ。これについて触れぬわけにはいくまい。
私、家ですき焼きを食べたのは人生で今回が初めてである。
これに驚くか驚かないかは、おそらく意見が分かれるところであろう。
と言うか、あまりすき焼きを食べた記憶がない。
我が家は、肉と言えばいつも焼肉であった。
偏食な弟の好みに合わせたのだろう。普段は好き嫌いを良しとしない両親であったが、焼肉を食べるような日はお祝いとかイベントごとがほとんどだから、そんな日くらいは子供の食べるものを、とでも思ったか。
すき焼き風味とか、弁当くらいなら私も食べたことはある。
しかし、本格的なすき焼きを食べたのは、家族以外、本当に片手で数えられるくらいであった。
長年すき焼きに手が出なかった要因が、もう1つある。
何かって?
いや……牛肉って高いじゃない。
自分の金で買う肉は、常に豚コマ一択である。もしくは、鶏肉。牛のステーキ用なんてとんでもない、とんでもない。
なんて言いながら、酒は平気でガンガン買うんだから、人の金銭感覚とは全くあてにならないものだ。
ところが、そんな私の意味不明な金銭感覚などふっ飛ばしてくれる出来事があった。
私事であるが、誕生日を迎えたのである。
当日は平日であったが、週末は盛大に飲み食いすると決めていた。
数日なんて、お祝い期間の範囲内である。祭りだって、文化祭だって何日かやるだろう。あれと一緒だ。
では、何を食べようか。
ここで、すき焼きの登場である。
土曜日、さっそく買い出しへ。
作り方や材料やらは一応調べた。
出来合いの割り下を買うか悩んだが、家であるもので適当に作ることにした。
1人すき焼きなのだ。絶対余るに決まっている。
使えずに捨てる未来か、またすき焼きをやって延々ループにハマる未来か、どちらかが待っているのは目に見えている。
聞けば、しょうゆ、砂糖、みりんがあればそれで作れてしまうらしい。
うーん……うち、みりんない。買うの、面倒くさい。
まあ、砂糖としょうゆ入れれば、甘じょっぱくなるでしょ。
すき焼き再現100%とは行かずとも、何らかの美味しい料理にはなるはずだ。
食べるのは私だけなので、文句を言われることもない。
こういう時、1人で作って1人で食べるって気楽でいいなと思う。
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