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視覚と聴覚のズレ
私は、隙あらば音楽を聴いている。
歩く時、電車の中、車の中。はたまた自宅で仕事をする際や、家事をしている時も何かしら音楽を流している。もちろん、執筆中も例外ではない。
音楽というのはジャンルはもちろん、印象も曲によって様々である。
テンションの上がる曲、しんみりする曲、アホっぽい(?)曲。
自分でBGMを選定する場合には、やはり狙って曲を決めるものだ。
仕事のやる気が出ないときに、あえてウケ狙いのアニソンを流して元気を出す時もある。面倒な家事なら、気分を上げるためにカッコいいサントラを選ぶ。ジーンとくる場面を書きたいなら、ノリノリな曲は避けるべきだ。
だがしかし。
ごくたまに、不可抗力によって雰囲気の合わない場面が飛び込んでくることもある。
視覚と聴覚のズレ。
ちょいと私の戯言をお聞き頂こう。
あの瞬間は確か、ONE OK ROCKのTaking Offが流れていたと記憶している。
仕事からの帰り道、最寄り駅から自宅に向かって歩いている途中だった。
ご存知の方はわかるだろうが、あれはカッコいい部類に入る曲である。
音楽を聴いている時の私は、創作について考えているか、他のことを考えているか、音楽に没入しているかのいずれかである。
つまりは、ぼーっとしているのだ。
あの日も例に漏れず、ぼーっとしていた。
現在私が書いている作品には、この曲が似合うほどカッコいいシーンもキャラもいない。ゆえに、曲そのものの雰囲気に浸る。
これは夜が似合う。もっと言えば夜の首都高を走る時に流したい。首都高走ったことないが。
いつか、こんなカッコいいシーンを書きたいものだ。キャラはそう……男性がいいだろう。いや、戦う女性でもいいな。過去を背負っていて、ギラギラしているような――。
こんなことをぼへっと考えている私である。音楽を聴いていると、大抵こう。そりゃドジのひとつやふたつするわけだ。
この時の私の視界は、どこに焦点が当たっているわけでもない。街全体を景色として見ている感覚だ。
だから信号があればちゃんと止まるし、人とすれ違えばちゃんと避ける。当たり前だ。
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