熊野、初めてスタジオを借りる

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熊野、初めてスタジオを借りる

 世の中には、いわゆるムダ知識なるものが存在する。  国内の歯医者の数はコンビニより多い、1円玉1枚を作るのに3円かかる、熊野はドラムを叩いたことがある、などなど。  そんなわけで、学生時代に音楽をやっていたことを、今まで大っぴろげには話してこなかった。  だが、しかし。  ついに行ってしまった。  ドラムを叩きに行ってしまった。  わざわざスタジオを借りて。  あまりに楽しかったので、半分は記録のつもりでここに記しておこうと思う。  ~*~*~  私は、吹奏楽部に所属していた。中学から大学まで、9年間。  中学はチューバ(金管楽器で1番大きくて音が低い)、高校はパーカッション(=打楽器)、大学はホルン(グルグルかたつむり)。  で、高校時代やっていたパーカッションの中に、ドラムがいるのだ。  もちろん、やった曲全てにドラムが出てくるわけではない。そして、ドラムが出てきても、私だけがやるわけではない。他のメンバーがが叩く場合もある。  そんなわけで、私が高校3年間でドラムを演奏した回数と言ったら、片手で収まる程度だ。バンドのドラマーとは、経験値に雲泥の差がある。  ここ、注意。  ドラムに触れた回数は少ないが、その分、他の打楽器は触っている。何だかんだ、高校時代が1番練習もしたし、相応の技術もあったと思う。  ここも、ポイント。テストに出ます。  さて、3年間部活をやり切った私は、前述の通り、大学にてホルンを始めた。まあ、それはいい。今は飛ばそう。  問題はここから。就職して、社会人になってからだ。  パタリと楽器に触れることをやめてしまった。  もちろん、音楽はずっと好きだし、聴いてはいた。  楽器は音の大きさがネックなので、演奏できる場所は限られる。探すのも面倒だし、金もかかる。他にやることもあるし、休みの日はゴロゴロしていたいし、自然と優先順位は下がる。  そんな状態が続いたものだから、楽器の演奏はもう、青春時代の遺産とすら思うようになっていた。  あれは、学生時代だからできたよね、と。  果たして、本当にそうか?  社会人歴もそれなりに長くなり、気持ちにも余裕が出てくれば、自然と趣味のことを考えるようになる。この書きものだって、学生時代やっていたのを復活させて今に至るのだ。  純粋に、ドラムが叩きたいと思った。  かつての経験を活かしたいとか、やらずで後悔したくないとか、理由が後から追随してくる。  私はもう大人だ。だから――やりたい時にやるんだ。
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