書類が下手な大人

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○振り仮名間違い  私事であるが、昨年の秋に仕事に関する資格試験を受けた。  そして今年の3月、合格通知をもらい、証明書も送ってもらって、無事資格ゲットと相成った。  私がやらかしたのは、その願書を書いていた時のことである。  この、願書作成がまた面倒であった。  面倒と言いつつも、仕方ない。書かなきゃいけないものは、いけないのだ。  だから書くけど。  記入すべき紙は、全部で3枚あった。  1枚目は、いわゆる願書。履歴書のごとく、名前・住所・生年月日・最終学歴などなど、自分の経歴を記入する。  2枚目は、願書兼受験票みたいな感じだった。書く内容は1枚目とほぼ変わらない。  3枚目が面倒だった。職務経歴である。しかも内容や、年数などかなり細かい。  さらに、もし記入内容に誤りでも見つかろうものなら、資格は取り消しとなる。  これは注意深く書かなければならない。もちろん、まず最初にやっつけるは3枚目だ。  仕事終わりに、会社でそのまま書いた。どちらにしろ、社印ももらわなければいけないし。  3枚目を書き終え、帰宅し、寝る用意まで済ませてから、残りの2枚を書き始める夜の11時。気が緩む。  事件は起きた。  1枚目の住所の欄である。  私が住んでいるのは、区ではなく市なので、『東京都○○市』と書くのだが。  フリガナの欄にこう書いた。  トウキョウト ○○フ。  は!? フ……フ?  目が覚めた。  もちろん、そんな行政区は存在しない。そして、何故『フ』と書いてしまったのか、心当たりもない。  もし途中でピタッとペンを止めていれば、上手く『シ』に書き換えてごまかせたが、『フ』は完全体として、そこに強い存在感を放っている。  ああ、何て綺麗な『フ』だろう。  紛れもない『フ』、黒のボールペンで書かれた立派な『フ』。  何で『フ』って書いたんだよ、私……。  フフッ。
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