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さあ、問題はこの後だ。
私が魔法でも使えれば、この文字を浮き上がらせて手に握ってしまうところだが、残念ながらそんな力はない。
願書作成の注意点には、こんなことが書かれていた。
書き損じた場合には、二重線を引いて訂正印を押して下さい。修正テープ等は認めません。守られない場合には、願書を受け付けない場合があります。
そうですか、そうでしょうね。
しかし、これはフリガナを間違えた場合にも、適用されるのだろうか?
そう考えて、注意点を隅々まで読んでみたが、フリガナを間違えた場合の処置など、どこにも書いていない。
当たり前だ。そんなアホなミス、向こうだって想定していないだろう。
住所の、漢字で書く欄は間違えていないのだ。だから、そちらを読んでもらえれば『東京都○○市』とわかるだろう。
しかも、間違えたのは地名ではないのだ。地名だったら、これはどう読むのですか、どこなのですか、という話になる可能性も考えられる。
だが、私がした失敗は『市』に『フ』と読み仮名を振ってしまったことなのだ。果たして、こんなことで願書取り消しなんてあるのだろうか?
実はこの時、同じ紙にすでに訂正印が1か所押されていた。どの項目だったかは、もう忘れてしまったが。
確か、漢字のミスだったと思う。
それに加えて、もう1つ訂正印を押すとなったら、何ともみっともない願書ができるのは目に見えている。
もう、ここはいいんじゃないのか? きっと、フリガナくらいノーカンだ。
その時、私の脳内にもう1つの声が響いた。
「このまま出して、受け付けてもらえずに、そのことを会社に報告する方がよほど恥ずかしいのでは?」
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