いい年した大人が迷子になったり、ピザやケーキ食べたり、UNOで遊ぶだけの話

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 どうやら、スクランブルスクエアと、ヒカリエを繋ぐ連絡通路に迷い込んでしまったらしい。  案内板もあるはずだが、そもそもどうしてこんなところに来てしまったかわからず動揺しているN子には、意味を持たなかったようだ。  さらに。 「途中、ネットが切れちゃって。Google Mapは動かないし、みんなのLINEも来なくなったし、私どうしようってなってた」  それは焦る。 「そんなことあるの」 「人多いから、負けちゃったかな」 「なるほど」  ともかく、合流できてよかった。N子も笑っているし、終わりよければ全てよし、ということでいいだろう。  今度は4人で、来た道を戻る。 「ところで、一体どこで道を間違ったの?」  N子の隣を歩きながら、私は尋ねた。 「ハチ公口出て、横断歩道渡ればすぐだったのに」 「それが……集合場所がA5b出口だったじゃん?」 「うん」 「だから、地下鉄の方に行かなきゃいけないのかなって思いこんじゃったのよ」 「ああ、なるほど」  これは盲点だった。  出口の名前だけ聞いたら、地下鉄を連想させるだろう。やはり、素直にハチ公にしておけばよかったのだ。  熊野、心の中であちゃあ、とひたいを叩いた。 「あとね、渋谷が思った以上に変わってた」 「そう、それはそうなの。すごくわかりにくくなって」 「新宿よりはマシかなって印象があったのね、私の中では」 「はいはい、あなた新宿で華麗に迷子になったもんね」 「でもよく考えたら私、渋谷来るのすごく久しぶりだった。何年かとか、それくらい?」 「じゃあ、わかんないね」  前言撤回。悪いのは、わかりにくい渋谷の方。 ……ってことにしちゃ、ダメかしら。
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