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大きすぎて、リュックにも入らない。
口を開けて、空気を抜くというわけにもいかない。
仕方ないので、S子のお詫びお菓子とともに、持参してきたトートバッグに突っ込んだ。
最後、忘れ物がないか確認して、写真を撮った。
原状復帰しましたよ、という証明のために、運営会社に送るのだ。
マンションを出て、渋谷駅に向かう。
時刻は夜の6時を回っていたが、相変わらずの人混みだ。目的地に向かって進んでいるつもりが、変な方向に流されるし、後ろの友人たちとは分断されてしまう。
渋谷のそれは、他のターミナル駅とは、ひと味違うと思う。
例えば新宿。あれも人だらけで進むのに苦労するが、実は人の流れができている。
それに乗ってさえしまえは、あとは楽なもんだ。
ただ、乗るのと、あと脱線する時に苦労するわけだが。
ところが渋谷は、人の流れがない。みんな縦横無尽、全方向に人が動いている。それでいて力が強いから、うっかりすると本当に流されてしまうのだ。
例えるなら、祭りの混雑に近いだろうか。
あれは、みんなゆっくりのんびり進むから、まだいい。祭りや初詣のあの混雑が、全力で進みにかかっている状況を想像して頂きたい。いるだけで疲れる。
スクランブル交差点を渡ったあたりで、ふとリュックが引っ張られている感覚を覚えた。
振り返るとS子が、リュックの外ポケットに手をひっかけて、後を付いてきている。その後ろには、C子とN子も列をなしていた。
「列車ごっこか!」
「だって、持ってないとはぐれるんだもん」
「斜めから人が来て、分断されるんだよ」
それはそうだけどね。
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