山歩きの話~その1.高尾山~

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 いざ、山登りへ。  初めは、アスファルトの坂を上っていく。  しかしすぐに、土や石の転がる山道となった。  広がった木々の根が、道のあちこちから顔を出している。足元をよく見ないと、引っかかって転んでしまいそうだ。  徐々に、岩場も現れる。わずかなくぼみに足をしまい、踏ん張って前に進むわけだが、左右どちらの足を出すか、これが非常に重要となる。  平地なら、左右交互に出せばいい。  ところがどうだ。右、左と来て、次のくぼみがまた左にあったら。  次の左に行く前に、右足で木の根を踏んで、一瞬足場とするか。もしくは、足を伸ばしてもっと向こうにある右のくぼみに行くか。自分に、その脚力があるか。  なんてことを、歩きながら考えるのだ。  基本は、前の人に倣えばよい。ただし、前の人と自分が同じように登れるとは限らないから、無理は禁物だ。ゆっくり、細かく進めばよい。  この、足場の選択も慣れだ。  車を運転する方にしかわからない例えになって申し訳ないが、免許取り立ての頃を思い出してほしい。  ミラーを見て、左右を見て、次はウィンカーを出そう、なんていちいち考えていたはずだ。当然、雑談なんてする余裕はない。  それが、いつしか身体が動作を覚え、パターンを知り、歓談しながら運転できるようになっていく。  おおよそ、アレと同じ感覚と思っていい。  しかし、この6号路は本当に自然を感じられる。緑がきれいだ。空気が気持ちいい。  きついことも含めて、ああ私は山を登っているなと思える。  この充実感を、この自然の中で得られるなら、登山も悪くない。  と言いつつ、すぐに息切れはする熊野であった。  誰か、体力をくれ。  来年のクリスマス、サンタさんにお願いしようかしら。  くれるかな。くれないな。 ↓S子が道中撮った写真。下は岩場、見上げれば一面の緑。69876a1c-67f3-4dcd-88c0-86aceb179ebd  手前は私が写っていたものを、上からペンで書きなぞった。  なので、本当にこの体勢だし、この服装。  熊が人間の等身で2足歩行って……やっぱり違和感ある。  なお、奥の人影は他の登山客。
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