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ボールペンで名前を書く。もうウン10年書き続けてきたマイネームだ。これはさすがに間違えない。
次は捺印である。記名欄の右端に、㊞と書いてあるので、そこに押せばいいものを――。
記名欄のすぐ隣に、『給与の支払者受付印』と書かれた丸がある。
これはつまり、給与の支払者――会社側の印が押されるべきところなのだが。
もうお分かりだろう。
私はそこに捺印した。
押した瞬間、間違えたことに気づいた。
どう見てもおかしい。給与の支払者と書いてあるだろう。何故、ここに熊野の名があるのか。
あとコンマ数秒でも早く気づいてくれれば……と嘆くものの、時すでに遅し。
年末調整を受ける者、熊野。給与の支払者の印鑑も熊野。意味がわからない。
どうして、そんなうっかりが誕生してしまったのか。自分で考えても、正直よくわからない。
あえて挙げるなら、正しい㊞よりも、給与の支払者印の○の方に目が行ったとしか言えない。全くもって、情けない。
さて、毎度のごとく、問題はこの情けなき間違いを、どう処理するかである。
こんな重要な書類、思いつくのは訂正印くらいしかない。修正テープなんてダメだろうし、新しいのもう1枚下さいって、あなた学校のプリントじゃないんだから。
しかし、果たして捺印に捺印で訂正とは。
一応、会社の担当に確認してみた。
「あ、二重線で訂正印押して頂ければ大丈夫ですよ~」
明るい返答が私の心にグサッと刺さる。
本当、アホで申し訳ありません……。
結果、熊野の印は二重線で消され、その隣にまた熊野の印が押されるという、奇妙な図となった。
よく考えてみれば、この後さらに、本来押されるべき印鑑が加わるのである。
1か所しかない欄に、3つの印鑑。しかも、そのうち2つは個人名で1つは訂正印。
パッと見たら、滑稽なことこの上ない。
税務署の担当も、こんなもの見たら失笑であろう。
それとも、この広い世の中においては、爆笑ものの間違いをしてくる人もやはりいるのだろうか。
私のドジが全国基準のどの辺りにいるかも含めて、ちょっと気になる。
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