さよなら3500円

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 腕の中の電灯が、やけに長く感じる。  いやいや、大丈夫だ。  だって、居間の明かりだぞ。あんな短いわけないじゃないか。  自然と、家に向かう足が速くなる。  早く帰宅して、確認したい。安心したい。  鍵を開けて、中に入った。  使い古した蛍光灯は、玄関のすぐ横に立てかけてある。  並べて、立ててみた。 「全然、違うじゃん……」  正解は、20形でした。ちゃんちゃん。  どうしてあの時、やっぱりやめておかなかったのか。  やけに高いと思ったんだ……。  せめて、ポイント支払いをすればよかった。律儀に現金で払ったせいで、財布の中が寂しいことになっている。  1人暮らし始めたばかりなら、まだこういう失敗もわかる。  だが、もう1人暮らしを始めて、私は一体何年が経っているのか。  もっと言えば、人生初めて一体何年経っているのか。  木造建築だったら、とっくにリフォームしなければいけない歳だぞ。  とりあえず、エッセイ用に写真だけ撮って、32形の蛍光灯は押し入れにしまった。  外に出しておいたら、ことあるごとに見ては情けない気持ちになるだろう。 ↓右が32形、左が20形。……全然長さ違うじゃん。b3e2b09a-8763-49dc-bf7f-2c229e21eee2  結局、翌日の金曜日に改めて買い直しに行った。  2本セットで1500円ほど。  む、やはり値上がりはしているのか。  今度はポイントで買う。当然、32形の3500円超を取り返せるわけではないが、せめてのあがきだ。  そして、ポイントも無駄に消費しているので、結局損をしていることには変わりない。  もう気持ちの問題だ。それくらいしてやらないと、浮かばれない。
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