さよなら3500円

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 翌日。蛍光灯を取り換えた。  カバーを外し、念のためにどの蛍光灯が切れているか、スイッチを点けて確認してみる。  間違えて、切れてない方を外して切れてる方を残した、なんてことあってはならない。  私の心の体力は、もう限界まで減っているのだ。 「あれ?」  2本切れているのは知っていたが、もう1本も切れていた。  いつの間に、ご臨終を迎えていたらしい。  よかった。  本当に、ラストの1本がロストなオチになっていたかもしれない。  現状、手元に新品は2本しかない。とりあえず、2本を換えて、もう1本はスルーしておくことにした。  カバーを外し、スイッチを点ける。  おお、明るい。  そして、元の蛍光灯と色が違うことに気が付いた。 「まあ、いいや……ん?」  小さな影が、ちょろちょろ動いている。  わかった、クモだ。 「もうー」  私が蛍光灯を換えている間に、カバーの中に潜り込んだか。  あのまま放っておいたら、やつは電灯の熱か、脱出できないままで確実に死ぬだろう。  わかる。だって実際、中で虫が死んでたから。  仕方なく、付けたカバーをもう1度外した。  ほら、やっぱりいる。  小さくて、色の薄いクモ。クモというより、ホコリみたいだ。  やつを救出し、外廊下の手すりに置いてから、再度虫がいないことを確認して、カバーを戻した。  全く、気付いたからよかったものの、安易に中に入らないでほしい。  他のクモたちにも、よく言っておいてくれ。  こうして無事(なのかどうかはさておき)、蛍光灯の取り換えは完了した。  ひとまず、突然家の中が真っ暗になるオチは回避したはずだ。  問題は、私がこの家に住んでいる限り一生使うことのないであろう、32形の蛍光灯である。  もしかして返品できないかと調べたが、通販以外は不可とのこと。残念。  とりあえず、誰か周りで使っている人がいないか、聞いてみようと思う。  今回の教訓。  仕事終わりに家電を買いに行ってはいけない。  己の記憶力なんて、すっとこどっこい。  やることを後回しにしてはいけない。でも、多分またやるんだろうな。  以上。
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