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三
葵を埋葬してから数日後、私は大柄の男の家に引き取られたが、十日足らずで他の家に引き取られ、また数日で他の家に……。改めて、半妖は他の妖怪から嫌忌されているのだと分かった。そして、葵の子であるため簡単に捨てられないという変な遠慮が入ったそれは、あからさまに非難されるより嫌だった。
そんなある日、大柄な男が私を家によびだした。
「黙ってろと言われていたんだが、これ以上この村に置いておくのも難しくなったからな……。玄が葵を殺した理由なんだが、聞きたいか?」
「うん」
男は大きな湯呑みの茶を飲み干すと、私を見て言った。
「葵は特殊な人喰い鬼でな、飢えや病気じゃ死なない。つまり、どんなに辛くても死ねない身体なんだ。それを分かってて、葵は人を喰わなかった。人間を喰ってたら紅葉が悲しむからってな。まぁ、他にも理由があるとは思うが、いつか葵が俺にそう言ってた。紅葉が帰ってきたとき、葵は限界だった。だから俺は、玄に頼んだんだ。葵を殺してくれってな……葵は最期に紅葉と会えて嬉しそうだった、葵の顔見ただろう? 両目を閉じて笑ってたのは、最期に紅葉に会えたからだよ」
「そう、だったんだ……」
男は私の頭を撫でると、そっと言った。
「明日、玄の屋敷の誰かに迎えに来てもらうことにした。玄の元が嫌なら、他所に行きたいとそいつに言うんだぞ?」
「うん」
私は葵の墓の前に座った。そこで少し話して、今夜は男の家で眠った。
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