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 頬をすり抜ける風は冷たいのに、照らす日差しはどこか暖かくて。春はもうすぐそこまで来ているのだと、そう思った。 「これにて令和三年度卒業証書授与式を閉式いたします」  名前をいまいち思い出せない薄毛の先生の言葉を聞きながら、わたしは換気のために開けられた窓の外へと視線を移した。 「卒業生退場」  桜の木はまだ、その蕾を咲かせてはいなかった。
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