昔々、ではじまる物語

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昔々、ではじまる物語

 昔々、あるところに嘘つきの国がありました。  国には二つの王家が存在し、互いに一人の王子と一人の姫を結婚させ、王家の血筋が絶えぬようにしていました。  筆頭王家の王子が成人を迎えたその日、次頭王家の姫との顔見せが執り行われました。  王子は姫を目の当たりにし、その美しさに心を打たれます。姫はしかし、金糸の縁取りのある白い薄布のベールの下で恥ずかしそうに俯いているばかりで、王子がいくら話しかけても、わずかに頷くか、首を振るばかりです。  姫の奥ゆかしさの虜になった王子は、その日から婚礼式が行われる日までの三十日間、毎日のように姫に贈り物をしました。心を込めて書いた手紙を添えて、美しさを讃え、王子がいかに姫を愛しているかを謳いました。  しかし、王子の心とは裏腹に、姫からは三日に一度ほど短い返事があるばかり。  ですが王子は姫の返信の手紙を胸元に仕舞い込み、いつもあなたと同じ心でいると、次の手紙に書き添えました。  そうして王子が姫と愛を育み、三十日が経過したその日、婚礼式が執り行われました。  王子は姫の前で、病める時も健やかなる時も、生涯姫を愛し続けることを誓いました。姫も、その時ばかりは小さな声でしたが、生涯王子を愛し続けることを確かに誓いました。  その日、嘘つきの国では盛大な披露宴が開かれ、国中が婚礼式に湧きました。馬車のパレードを一目見ようとする群衆に応える王子と姫は、きらびやかで国中で一番、幸せそうに見えました。
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