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目が合った瞬間に恋に落ちる、という言葉を聞いたことがある。
実際にそんなことがあるのだろうか。
俺は人間のことなんてよくわからないただの動くおもちゃだから、恋愛について詳しいことなど知らないが、目の前にいる彼女が俺を見つけて手に取ってくれた、それだけでよかった。
「可愛くないこれ?」
友人と思われる女性と共に、このリサイクルショップへ訪れた彼女が店内をうろつきながら探し当てたのが、俺だった。
フラワーロックという音に反応して動くおもちゃで、一昔前は空前のブームを起こしたヒット商品だ。
鉢植えから生えた一本の黄色いひまわりの顔にサングラスが掛けられ、ギターを持ちながら音に合わせて陽気に踊る。そのキャラクターは子どもよりもむしろ大人に愛された。
しかし、時代と共にブームは去り、人々の記憶から消えていったのが現状だ。
数年前には復刻版が発売され、再び注目されたようだが、以前ほどのブームにはならなかった。
日本製だったこともあってか、発売から二十年以上経過してはいるが、大きな故障はない。電池さえ入れれば活発に動くことができる。まあ、何年も使用されていなかったわけだから、劣化するスピードも遅かったのかもしれないが。
「え?どこが?」
彼女の友人が不思議そうに言った。
「なんかさ、この古くさい感じがなんか可愛くて。
これ音に反応して動くみたいだけど、どんな風に動くんだろう」
箱の中から俺は彼女を見た。年齢は二十代後半ぐらいだろうか。化粧っ気のない地味な印象だ。
恋人がいるとは到底思えないが、そんなことはどうだっていい。
何年もこの店で売れ残り続けたんだ。
誰でもいいから、早く俺を持ち帰ってほしいと思っていた。
「決めた!買おう!」
「え、ほんとに?うそでしょ?これ結構値段するよ。サリってほんと変な趣味してるよね」
「ほっといてよ」
そう言って彼女は俺を持ち上げて会計へと向かう。
ようやくだ。
こんな狭い箱の中からやっと脱出できる。
存分に体を動かすことができるぞ。
俺は期待に胸を膨らませた。
サリという名の彼女は狭いワンルームに一人で暮らしているようだった。
部屋にはベッドとローテーブルがあり、棚には小物が飾られている。
箱から出され、電池を入れられた俺はその空いたスペースに置かれた。
部屋を見渡せる場所だ。
「キミの名前はね、えーと、花男にしよう。よろしくね、花男」
はなお?花の形をした男だから、はなお?
なんという安直な名前。
というか、おもちゃに名前をつけるのか?
俺が呆気に取られていると、彼女はなにが楽しいのか何度も手を叩き、声を出して俺の反応を見て喜んだ。
なんだっていいさ、ずっと退屈していたんだから。
今回も適当に踊って、壊れるまで動き続けるだけだろう。
俺が生きる目的なんて、そんな程度のものだ。

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