神木の花ひらくとき

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 ヘッダーに使った桜はカスミザクラだ。花崎神社という神社の境内で今年の春に満開になったところを撮ったものだ。満開になるのは実に七七年ぶりだと聞いている。正確に言えば、七七年前に満開を目撃した人はいるが、その後の七六年間、数輪ひらくところは目撃されているものの、満開になったと証言する人がいないのだ。  花崎神社はごく普通の小さな町の小さな氏神神社だ。御祭神も大国主命や猿田彦神等のよく聞く神様であり、これといった特徴のある神社ではない。神主は常駐しておらず、掃除や賽銭の面倒は氏子会の面々が見ているようだ。おまつりの時だけは隣町の神社から神主が出張してくるものの大抵は無人で、やたらと広い境内はいつもひっそりとしているという。  神社は海沿いの小さな町の小高い山の上にある。周囲を高く太い木々が覆い、その大半がご神木としてあがめられているという。カスミザクラもその一本で、一人では手が届かないほどの立派な幹には、これまたしっかりとしたしめ縄が回されている。そのカスミザクラが今年の春は写真の通りに満開になった。
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