3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
私は私の色を知らない。
だって私は花だから。
私が咲くべき色がどんな色なのか、どんな形なのか、つぼみの私はまだ知らない。
あなたが私を育ててくれて、私のことを見てくれて、そうして時をかけて私はようやく咲ける。
その時を心待ちにしているあなた。種のころからずっと、守り続けてくれたあなた。
待っていてね、もうすぐよ。
朝日の中であなたは目覚め、ようやくつぼみから花ひらいた私を見つけ、嬉しそうに駆けつける。
その柔らかな瞳の中に私が映り、私は初めて私の姿と色を知る。
「綺麗に咲いたね」
あなたの瞳が喜びに輝いている。その輝きの中に私がいる。これが私の色なのね。
私はきっとこの世で一番綺麗な色の花をひらかせたのに違いない。
あなたをこんなに喜ばすことができるのは私だけだわ。
くすぐったくて、誇らしい。
私があなたと同じにんげんだったら、きっとこの想いにも色や名前があるのでしょう。
その色を、私は花だから知ることはないけれど。
最初のコメントを投稿しよう!