花の色を知らない

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 私は私の色を知らない。  だって私は花だから。  私が咲くべき色がどんな色なのか、どんな形なのか、つぼみの私はまだ知らない。  あなたが私を育ててくれて、私のことを見てくれて、そうして時をかけて私はようやく咲ける。  その時を心待ちにしているあなた。種のころからずっと、守り続けてくれたあなた。  待っていてね、もうすぐよ。  朝日の中であなたは目覚め、ようやくつぼみから花ひらいた私を見つけ、嬉しそうに駆けつける。  その柔らかな瞳の中に私が映り、私は初めて私の姿と色を知る。 「綺麗に咲いたね」  あなたの瞳が喜びに輝いている。その輝きの中に私がいる。これが私の色なのね。  私はきっとこの世で一番綺麗な色の花をひらかせたのに違いない。  あなたをこんなに喜ばすことができるのは私だけだわ。  くすぐったくて、誇らしい。  私があなたと同じにんげんだったら、きっとこの想いにも色や名前があるのでしょう。  その色を、私は花だから知ることはないけれど。  
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