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「壮馬さんは、初対面のとき琴子さんにどきっとしたんですね」
「そ……それは……別に深い意味は……」
「遠慮しなくていいんですよ。わたしもどきっとしましたから」
雫は「これ以上ない!」というくらい微笑むと、央輔に顔を戻し、少しだけ真剣な面持ちになった。
「先ほど壮馬さんが言ったとおり、琴子さんは昨日、宮司さまとお出かけしていました。ほかの男性と仲よくしているとは考えられません」
「そ……そうだよ。そもそも琴子さんは、二股をかけるような人じゃない」
気を取り直して俺も続く。央輔は深く頷いた。
「俺だって、琴子さんが二股かけているとは言ってないよ……二股とはね」
「どういう意味だよ?」
「もう全部話すよ」
央輔が身を乗り出す。
「琴子さんは別の日に、眼鏡をかけて髪の毛を七三分けにした、いかにもビジネスマン風の人とも歩いていたんだ」
兄貴とワイルドに加えて、ビジネスマン? ということは……。
「琴子さんは、二股じゃない。三股かけていることになるね。もしくは、それ以上……」
央輔の言葉に、俺と雫は顔を見合わせた。
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