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やきもちって……。
「雫さんにかぎって、そんなことあるはずない」
「女性がいると知って、あんな声を出したんですよ? 私だと知って安心したんですよ? やきもち以外のなんだというんです?」
「やっぱり脈はあるね。告らせるしかないよ、壮馬」
身を乗り出してくる央輔に、戸惑いつつ首を横に振る。
「万が一、脈があったとしても、雫さんは告白してくるような性格じゃない」
「いくら冷静沈着でも、雫ちゃんは17歳の女の子なんだ。ロマンチックなシチュエーションに持ち込めば、本音を打ち明けてくれるかもしれない」
「ロマンチックなシチュエーションって、例えば?」
「夜の境内なんてどうだい?」
目を閉じ、想像してみる。
*
高い樹木に覆われて静まり返った、外界から隔絶されたような源神社の境内。手水舎も社務所も社殿も、夜の蒼い闇に沈んでいる。巫女装束の雫は、玉砂利を踏みしめながら俺に近づいてくる。そして背伸びして、俺の耳許に口を寄せてこう囁くのだ──。
「昼間、掃除に気合いが入ってませんでしたね。その分、残業してきれいにしていただきます」
*
「──怒られてる想像しかできない」
「なんだ、それは!」
両手で頭を抱える俺に、央輔はあきれ顔になった。
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