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「そう言われてもだめなものはだめなんだ。いくら考えても、雫さんに怒られてる想像しか……」
ため息をつく俺に、央輔はますますあきれ顔になる。藍子ちゃんも同じ顔になりかけたが、気を取り直すように言った。
「なら、夜のお家なんてどうですか? 宮司さまと琴子さんはなにかの用事で出かけていて、今夜はお二人だけなんです」
腕を組み、目を閉じる。藍子ちゃんが提示してくれたシチュエーションを思い浮かべてみる。
しばらくして、答えは出た。
「──明日に備えて早く休みましょう、とさっさと寝られる想像しか」
「ええと……だったら、授与所で二人きりは?」
「──どうして何度もお釣りを間違えるんですか、と説教される想像」
「いつかみたいに、赤レンガ倉庫にお出かけとか!」
「──横浜にはだいぶ慣れたので次は一人で来ます、と言われる想像」
「元町ショッピングストリートでお買い物!!」
「──30分後に落ち合うことにしましょう、と置き去りにされる想像」
それからも藍子ちゃんはめげることなく数々のシチュエーションを提示してくれたが、いくら考えても雫に告白される想像はできなかった。アルコールが回ればあるいは、と思ってビールにサワー、ワインまで飲みまくったが効果なし。
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