雫ちゃんに告らせたい

4/7
前へ
/56ページ
次へ
「そう言われてもだめなものはだめなんだ。いくら考えても、雫さんに怒られてる想像しか……」  ため息をつく俺に、央輔はますますあきれ顔になる。藍子ちゃんも同じ顔になりかけたが、気を取り直すように言った。 「なら、夜のお(うち)なんてどうですか? 宮司さまと琴子さんはなにかの用事で出かけていて、今夜はお二人だけなんです」  腕を組み、目を閉じる。藍子ちゃんが提示してくれたシチュエーションを思い浮かべてみる。  しばらくして、答えは出た。 「──明日に備えて早く休みましょう、とさっさと寝られる想像しか」 「ええと……だったら、授与所で二人きりは?」 「──どうして何度もお釣りを間違えるんですか、と説教される想像」 「いつかみたいに、赤レンガ倉庫にお出かけとか!」 「──横浜にはだいぶ慣れたので次は一人で来ます、と言われる想像」 「元町ショッピングストリートでお買い物!!」 「──30分後に落ち合うことにしましょう、と置き去りにされる想像」  それからも藍子ちゃんはめげることなく数々のシチュエーションを提示してくれたが、いくら考えても雫に告白される想像はできなかった。アルコールが回ればあるいは、と思ってビールにサワー、ワインまで飲みまくったが効果なし。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加