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雫の視線の先で、チャイナドレス少女は拳法の形らしき動きを繰り返している。
「あの動き……おそらく中国拳法の達人でしょう。わたしでは、攻撃されたとき咄嗟に反撃してしまいます。手加減する余裕はありません。そんなことをしたら、わたしがやられます」
そういえば雫は、合気道をやっていたのだった。俺も何度か腕を捻り上げられたことがある。なるほど、それで戦闘か……いやいや、待て。
「俺が彼女に攻撃されたらどうするんですか? 体格がいいだけで格闘技の経験なんてないから、下手したら大けがしちゃいますよ」
「壮馬さんは見た目が屈強ですから、いきなり攻撃してくることはないと思います、たぶん」
「たぶんっ!?」
「いいじゃないか。行ってきなよ、壮馬」
奥から兄貴が顔を出した。
「そう言われても……」
「雫ちゃんが反撃して、傷害事件になったら困るだろう?」
う……。
「お願いします、壮馬さん」
「行っておいで、壮馬」
雫は真剣な、兄貴はおもしろがっているとしか思えない面持ちで言う。
「はい」と応じるしかなかった。
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