あわれ

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「まだまだ先が長いのだから、一歩ずつゆっくり進めばいいのよ。この桜だって、ここまで満開に花を開かせるのに、何年もかけて、立派になっているのよ。」 目の前に広がる桜にもう一度目をやる。 「そうですよね…。どうしても他の人と比べて、私には何も才能もないしって思っちゃって。」 「あら、才能がないなんて、誰が決めたの?」 「誰って…。」 「口うるさい年寄りの戯言だと思って聞いてくださいね。でも、誰にとっても可能性は本当無限大なの。だから、そんな風に否定的なことばかり自分に言っちゃダメよ。」 「はい…。」 「騙されたと思って、何か挑戦しましょう。なんでもいいのよ、あなたをワクワクさせるものは何かしら。」 (ワクワクさせるもの。) その時脳裏に、昔好きだった絵が浮かんだ。 「上手くはないですけど…絵が好きです。」 「あら、いいじゃない。素敵だわ。じゃあそれを、続けてみましょう。」 「え?続けるって。」
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