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世界は残酷だ・・・。
スノウは世界によって、二度も暖かい家庭を奪った。
そのことを悔やんで、またスノウは一鳴きした。
歩佳のベッドはほのかな歩佳の使うシャンプーの香りを遺して、再び温かみを感じることのない無機質な物となった。
昨日までは歩佳の香りを感じつつ、歩佳の寝る脇で身体を丸めて寝るのがスノウのささやかな幸せだった。
歩佳のいないベッドで、スノウは歩佳を想いながら眠りについた。
どのくらいで眠りに深く堕ちただろう・・。
はっきりと意識できたのは、街中の雑踏と街路樹の葉の匂いがかすかにする路地に立っていると気づいた時だった。
身体に違和感を感じたのは、猫の姿をしていなかったと言う事。
普段白い姿の猫だったスノウは、その世界では人間の姿をしていた。
金髪の少女・・かつて歩佳と一緒に見ていたテレビの中で、外国の女の子でそういう姿の子がいたように思う。
何より二足歩行などしたことがなかったのに、普通に立ち歩きができている自分を不思議に感じながらも、なんとなくこれは夢の世界なのだと気づくことができた。
なぜこんな夢を見るのかわからず、茫然としていた時・・・
自分のいる近くの交差点で激しい衝突音がした。
交通事故が起きたのだ。
スノウは胸騒ぎがして交差点に駆け寄る。
人だかりの中に誰かが倒れていた。
誰かにスマホで電話する人・・写真を撮る人・・無責任に騒ぎ立てる人・・
「うわぁ・・・もう死んじゃってるんじゃないの?」
「誰か救急車呼んであげなよ。」
「そういうお前がすればいいだろうが!」
無責任な喧騒を掻き分け、スノウは倒れている人に近づく。
そして、目の当たりにする・・・そこに倒れているのが歩佳であることを・・
そこで目が覚めて、薄暗いいつもの部屋に戻ってきた。
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