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1.夢で逢えたら
歩佳は死んでしまった。
白猫スノウがそれを知ったのは、歩佳の親族が慌ただしく歩佳の荷物を取りに来た時のことだった。
交差点の信号でスマホをさわりながら歩いていた歩佳に信号無視で突っ込んできた車が追突したために、歩佳は頭を強く打って亡くなってしまった。
歩佳に似た香りのする大人が歩佳の衣服や小物を取りに来たのだ。
そしてスノウの存在に気づき、少し困った顔をして、
「歩佳が死んでしまったの・・。あなたのお世話を今してあげられなくてごめんなさい・・。ご飯は入れて帰るからいい子にしててね・・・。」
と、涙ながらに話しかけてくれたことで、これが悪い冗談などではなく、悲劇なのだと知ることになった。
誰も帰って来ないこの部屋で、明かりが点くこともなく・・
スノウは歩佳の残り香がするベッドに上り、さみしくて小さく一鳴きした。
「歩佳・・・・。」
それは雨が少し降り始めた冬が始まりかけた季節。
段ボールにお情け程度のブランケットと一緒に入れられ、暖かい部屋から放り出された子猫のスノウを歩佳が見かけたことが始まりだった。
心優しき女性は白き子猫を抱きかかえ、連れ帰り、スノウと名付けて傍に置いてくれた。
スノウと住むためにペット可のマンションに引っ越し、2年ほどの間、スノウは歩佳と本当に幸せな日々を過ごした。
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