1、シックスマンVSコスモリオン

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1、シックスマンVSコスモリオン

 蟲の羽音にも似た耳障りな音で、六道睦は目を覚ました。  まだぼんやりとした意識を揺り起こし、周囲を確認する。  見る限り、何処かの施設の一室のようだった。  テーブルや椅子が投げ捨てられたように床へ放置され、薄い白熱灯が天蓋から侘しく照らしている。  知らない場所だ。睦の記憶にはない。  そもそも、何故自分はここにいるのだろう。  いつ移動し、いつ眠ったのかすら、彼には解らなかった。 「おっ、目が覚めたみたいだね」  混乱する睦に、白いコートを着た青年が話し掛けてきた。  人懐っこい笑顔を浮かべ、何故か傍らに銀色の球体が浮かんでいる。  そこで初めて、睦は他の人間達の存在に気付いた。  青年と対になるような全身黒ずくめの男に、ピッチリとした金色のラバースーツに身を包んだ男。  大剣を携えた少女に、鉄製の鞄を持った青年、更には忍者のような出で立ちの少年までいる。  人数は、睦を含め七人。  姿も服装もバラバラだが、全員左腕に同じデザインのリングが嵌められている。  もしやと思い確認すると、睦の左腕にも同じリングが巻かれていた。 「驚いたでしょ。でも、これ外せないんだよね」 「…君は?」 「僕はアマキリ・アヤト。で、こっちが『ねーさん』」  アヤトと名乗った青年が、球体を指差し言った。  何の冗談かと思ったが、球体は睦の目の前まで近付くと、紛うことない人間の声を発した。 『アヤトの姉のアマネです。よろしくね』 「…六道睦だ。よろしく」  確かに女性の声だった。  機械で複製したものではない。  球体その物が、肉声として発していた。 「君は何処から来たの?何をしている人?」 「俺は…」  睦は僅かに遼巡し、「植物学者だ」と続けた。  嘘は吐いていない。  睦はフィールドワークを主とする植物学者で、助教授の肩書きも持っている。  だが、それは飽くまで身分の話。  六道睦、彼のもう一つの名前は『六想源神シックスマン』。  大自然を構築する『六源素』に選ばれた戦士である。  地球の自然を破壊し、全生命体の機械化を目論む『邪動帝国』と戦うことが、彼が大自然から与えられた使命だった。  だが、それをアヤト達に話すわけにはいかない。  今置かれている状況が、敵の罠では無いと言い切れないからだ。 「…ここは一体何処なんだ?君は何か知っているのか?」 「さあ?僕も目が覚めたらここにいたんだ。他のみんなもそんな感じらしいよ」
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