3、ステラギアVSアルバトロス

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3、ステラギアVSアルバトロス

 冗談じゃないよ…。  左腕のリングを弄りながら、アマキリ・アヤトは顔をしかめた。  散々引っ張ったり、叩いたりしてみたが、リングが外れる気配はない。  アマネの解析にも『UNKNOWN』の表記が出るばかりで、何で出来ているかさえも解らなかった。 「ホント…参っちゃうなぁ」  何もしなければやがて爆死。  戦って、負けても同じように死。  生き残るには戦いに勝つしかないのだが、アヤトは身を隠したまま自ら動こうとはしなかった。 『ねぅ、アヤト。いつまでこうしてるつもり?このままじゃどっちにしても自滅するだけよ』  アマネの問い掛けにも、アヤトは生返事ばかりでまともに答えなかった。  確かに、アマネの言い分は正しい。  姉として、弟に死んで欲しくない気持ちもあるのだろう。  だが、今のアヤトには戦う理由が見付からなかった。  アヤトが目指しているのは正義の味方である。  正義の味方は常に誰かの為に戦う。  例え、自らの命が危険に晒されようとも、自分の為に誰かを傷付けることはない。  正義の味方がその力を振るうのは、悪と戦う時だけなのだとアヤトは信じていた。 『甘いわアヤト。貴方が死んでしまっては意味がないのよ』 「…解ってるよー」  事実、アヤトも何もせずに死ぬ気はなかった。  アナウンスは、アヤト達を纏めて『ヒーロー』と呼んだ。  もし、彼等が本物の『ヒーロー』ならば、今の状況をすんなりと受け入れる筈がない。  必ず疑問を持ち、事態解決の為にうごき始める筈だ。  上手く協力体勢を作れれば、戦う必要は無くなるし誰も傷付けずに生き残れる。  それに、この戦いを仕組んだ黒幕にも手が届くかもしれない。  だが、問題は誰と組むかだ。  本当は全員と交渉したい所だが、相手が戦意剥き出しだったらマズイ。  ヒーローが好きなアヤトは知っている。  世の中には、『ダークヒーロー』という者達も存在することを。  その手の輩は自分の信念と正義を持ってはいるが、目的の為ならば手段を選ばず、犠牲も厭わない。  端から見る分にはかっこいいが、この状況で近づきたいタイプではない。  その上、制限時間まである。  交渉する相手は、吟味しなければならない。  …手を組むなら、あの人がいいな。  アヤトは最初の部屋で出会った、六道睦のことを思い出した。  直接言葉を交わしたのもあるが、睦の立ち振舞いや雰囲気は、アヤトの憧れるヒーロー像にかなり近い。  あの人なら、背中を預けられる。  もし一緒に戦えたら、きっと素晴らしいコンビになれるに違いない。  無意識のうちに、アヤトは睦に憧れを抱いていた。 『…アヤト』  アマネに呼ばれ、アヤトは思考を止めた。 『誰か来るわよ?』  遠くから、足音が聞こえる。  まだ姿を目視出来る距離ではないが、確実に近付いている。  アヤトは身構えた。  こちらに戦うつもりは無いが、相手がどう出るか解らない。  友好的な相手かもしれないし、出会い頭に襲い掛かって来る可能性もある。  …もしかしたら、睦かもしれない。  だが、そんな期待はすぐに裏切られた。  アヤトの前に現れたのは、巨大な剣を携えた少女だった。  腰まで伸びる鮮やかな黒髪と、透き通るような白い肌。そして、その瞳は碧色に輝いている。
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