1、シックスマンVSコスモリオン

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 睦は立ち上がり、自分の身体を確認した。  特に変わった所は無い。  記憶が欠如している以外には、全て平常通りだった。 「兄ちゃんたち、何を話してるんだい?」  アヤトと睦の間に割り込むように、少年が話し掛けてきた。  まだ10歳ぐらいだろうか。  首には緑色のスカーフが巻かれ、快活そうな雰囲気を纏っている。 「君は?」 「おいらはコガラスマル。こう見えて忍者なんだぜ」  確かに忍者らしいと言えばらしい。  しかし、まだ子どもだ。まさか、彼も自分達と同じように連れてこられたのだろうか。 「兄ちゃん達はまだ話しやすそうだね。あっちの方は全然でさ。おいらキンチョーしちゃったよ」  全く緊張感のない様子で、コガラスマルが言った。  どうやら、黒ずくめの男と大剣の少女のことを言っているらしい。  確かにあの二人からは近寄りがたいオーラを感じる。  黒ずくめの男はサングラスで表情が読めないし、少女は近寄れば斬られそうな雰囲気だ。 「あの二人はね…。なんだか怖いんだよね、ピリピリしてるし」  アヤトもコガラスマルに同意した。  残る二人の男達は何やら話し込んでいるようだった。  鞄を持った男とラバースーツの男…身なりは奇特だが、どちらにも一分の隙はなく、歴戦の勇士のような風格を漂わせている。  恐らくは相当な修羅場をくぐり抜けて来たのだろう。 「君もここへ来た記憶はないのか?」 「うん。気付いたらここにいたんだ。里で師匠と修行してた筈なんだけどなー」  やはり、コガラスマルにも記憶はなかった。  アヤトにも、睦自身にも無いとなると、他の者にも無いのだろう。  解っているのは、何者かによって集められ、閉じ込められていることだけだ。  しかし一体誰が、何の目的で…?  そう思った瞬間、室内に無機質なアナウンスが響いた。 『お集まりのヒーローの皆様、御待たせ致しました。これより本日のメインイベントを開始致します』  その言葉に、その場にいた全員の表情が変わった。  恐らく、同じ疑問と驚愕を抱いたのだろう。  しかし、アナウンスは彼等の心情を無視し、そのまま進行した。 『ルールは簡単です。これより、参加者の皆様には最後の一人になるまで戦って頂きます。制限時間は24時間。それ以上経過しますと、左腕のリングが爆発して失格となるのでご注意下さい』  アナウンスが途切れるのと同時に、一人の男が手を上げた。  全員黒ずくめの、アヤトとは正反対のあの男だった。 「…幾つか質問がある」 『どうぞ』 「俺は普通の人間とは違っていてな、爆発程度では死なんぞ」  その言葉に、一同がざわめく。  しかし、アナウンスは無機質に答えた。 『貴方がたのデータは全て揃っています。能力は勿論、その性質も全て把握させて頂いています。貴方がたが人間以上の力を持っていても防ぐことは出来ません』 「根拠は?」 『24時間経てば解ります』  アナウンスの口振りから考えて、ここにいる全員が何かしらの未知の力を持っているらしい。  自分以外の、しかも、こんなにも多くの超人が存在していることに、睦は驚きを隠せなかった。 「何故戦わせるんだ!一体何が目的なんだ!」  今度はラバースーツの男が叫んだ。  語気を強め、言葉には怒りがこもっている。 「彼の言う通りだ。無意味な戦いをするつもりはない」  鞄の青年も、ラバースーツの男に同調する。 『意味ならばあります。あなた方の存在証明です。優勝者には存在する権利が与えられます。それ以外の方は残念ながら存在の意味はありませんので、消滅して頂きます』  その言葉に、睦は言い様の無い恐怖を覚えた。  敵と戦う時とは違う、もっと根本的な、足下が無くなるような…。 『補足としてリングから各々のデータが表示されますので、存分に活用して下さい』  アナウンスに合わせ、床が振動を始めた。  最初は微弱な物だったが、まるで波紋が広がっていくように、徐々に強さを増していく。 『それでは、皆様の健闘をお祈りします』  アナウンスが締めくくられるのと同時に、睦の視界が反転した。
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