1、シックスマンVSコスモリオン

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 崩れた天蓋から曇天が覗いている。  どうやら床が崩れただけではなく、建物そのものが崩壊したらしい。  崩落の瞬間、睦は自ら身体を宙へ投げた。  瓦礫から瓦礫を飛び移り、流れに逆らわず、下へ、下へ。  途中、幾つかの影が上空へ向かっていったのが見えた。  何人かは外へと逃れたのだろう。  まだ全員の情報を把握した訳ではないが、睦のように何かしらの力を持っている者達が集められているらしい。  少なくとも、この崩落で命を落とした者はいなかったようだ。 「邪動帝国以外と戦えっていうのか…!」  曇天を見上げ、睦は呟いた。  未だに、自分の置かれた立場が理解し切れない。  戦いは何度も経験してきた。  命の危機は元より、多くの犠牲を出した戦いもあった。  だが、それは飽くまで敵との戦いであり、『守る』為の戦いである。  これが『邪動帝国』との戦いなら、睦は何の迷いも抱かなかっただろう。  元々、睦はただ植物を愛する一介の学者だった。  シックスマンとして六源素に選ばれたは、地球の自然を愛し、慈しむ心を持っていたからである。  六源素に選ばれた当初は迷いもした。何故自分が選ばれたのかと悩みもした。  だが、『邪動帝国』の非道を目の当たりにして、睦はシックスマンとして戦うことを決意したのだ。  大自然を守り、犠牲になる人々を救う。  それが睦の、シックスマンの戦う理由だ。  しかし、今この戦いに敵はいない。  倒すべき悪も、憎むべき非道も、睦の前には存在しない。  あるのは『戦い』の為の『戦い』だけだ。  大義名分を失った今、睦の中に残っているのは恐怖だけだった。 「迷っているみたいだな」  立ち尽くす睦の前に、一人の男が現れた。  部屋で共にいたラバースーツの男だ。  睦と同じように、地下へ降りていたらしい。 「君は…」 「リオン。銀河刑事だ」  男が名乗るのと同時に、リングがお互いの情報を提示した。
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