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銀河刑事としての姿を見せたリオンに触発されたのか、睦は手を翳して天空を仰いだ。
「…纏神!」
睦の両手が空を切り、六つの源素が身体に吸収される。
火、水、風、土、そして光と闇。
六源素を彩るシンボルを浮かび上がらせ、睦の身体は変化した。
胸に浮かび上がる六源素のシンボル。
拳には赤いグローブが装着され、六色の突起を携えたマスクが睦の顔を覆った。
これが、六源素の力を解放した睦のもう一つの姿。
赤き闘神、シックスマンである。
「それでいい。本気で来い!」
コスモリオンはスーツから、自身の武器であるレーザーソードを引き抜き、刀身を輝かせた。
コスモエネルギーをソードへ込めた最強の必殺技、『リオンダイナミック』の構えである。
コスモリオンが師匠達から直接伝授された奥義であり、レーザーソードで斬り着けた相手に大量のコスモエネルギーを流し込んで爆散させる。
彼はこの必殺技で、数多の悪を葬り去ってきた。
小手先の攻撃が通用する相手ではないと、幾多の戦いを乗り越えてきた直感が、コスモリオンに必殺技の使用を踏み切らせたのだ。
そして、それはシックスマンも同じだった。
足を深く大地へ落とし、力強く右拳を握り締める。
拳が輝き、六源素の力が宿っていく。
シックスマンに武器はない。己の拳と、身体に宿した六源素が最大の武器である。
コスモリオンの『リオンダイナミック』と同じように、シックスマンは自らの身体を武器として悪と戦ってきた。
だが、今その拳は同じ正義へと向けられている。
悪を倒す為ではなく、自らが生き残る為に。
「トォッ!!」
コスモリオンは駆け出した。
地を蹴って宙を舞い、シックスマンへ刃を降り下ろす。
「リオンダイナミッ…!!」
光の刃が今まさに斬り裂こうとする瞬間、コスモエネルギーの光は消え去り、シックスマンの右拳はコスモリオンを貫いていた。
「がっ…!?」
六源素は、あらゆる物に宿っている。
自然現象に当て嵌めれば、コスモエネルギーも例外ではない。
シックスマンはレーザーソードに宿るコスモエネルギーを光として吸収し、コスモリオンへ撃ち返した。
如何に堅牢なバトルスーツと言えど、今まで数多の悪を葬って来た自身の必殺技には為す術もない。
リオンはスーツの下で吐血し、そのまま崩れ落ちた。
呼吸も、胸の鼓動も、何も聞こえない。
メタリックブルーのバトルスーツは血溜まりに浮かび、二度と起き上がる事はなかった。
「…すまない」
その一言を絞り出すのがやっとだった。
いつもの勝利も、達成感も無い。
コスモリオンは紛れもなく正義だった。
自分とは異なっていたが、正義を行う者を手に掛けたのだ。
守る為の拳で、救う為の拳で。
シックスマンは血染めの拳から目をそらし、逃げるように走り去った。
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